海水魚の病気は、非常に進行が早く、初期対応が命運を分けます。特に「白点病」と「ウーディニウム病」は発生率が非常に高い、恐ろしい病気です。
この記事では、アクアリウムのプロが、これら2つの病気の「決定的な見分け方」から、「今すぐやるべき対処法(薬浴)」「本水槽のリセット方法」「確実な予防法」まで、あなたの魚を救うためのすべてを徹底解説します。
🚨 緊急チェックリスト:病気の初期サイン
以下の症状が見られたら、すぐにこの記事を読み進めてください。
- 体を岩や砂にこすりつける(かゆがっている)
- ヒレをたたんで泳ぎ方がぎこちない
- 呼吸が異常に早い(エラをパクパクさせている)
- 体表やヒレに「白い点」や「白い粉」が見える
- 食欲が急になくなった
🔍【最重要】白点病 vs ウーディニウム病の決定的な見分け方
まず、敵を知ることが重要です。どちらの病気かで対処法と緊急度が変わります。特にウーディニウム病は進行が非常に早く、数日で水槽が壊滅することもあります。
見分け方 比較表
| 項目 | ① 白点病(海水性) | ② ウーディニウム病 |
|---|---|---|
| 原因 | 繊毛虫(クリプトカリオン) | 渦鞭毛藻(アミロオーディニウム) |
| 見た目 | 「塩を振った」ようなハッキリした白い点。点は比較的大きい(0.5~1mm)。 | 「コショウや粉」をまぶしたような細かい白(黄)点。ぼんやりと見える。 |
| 発生場所 | 体表、ヒレ、目など全体に。 | エラから発生し、体表に出た時点では手遅れなことも多い。 |
| 進行速度 | 比較的ゆっくり(数日~1週間)。 | 非常に早い(1~3日)。 |
| 致死率 | 中~高。対処すれば助かる可能性は高い。 | 極めて高い。「最強の病気」と呼ばれる。 |
① 白点病(クリプトカリオン・イリタンス)
「塩」のようなハッキリした点が見えたら白点病です。初期なら体をこする程度ですが、進行すると体中を覆われ、衰弱して死に至ります。

② ウーディニウム病(アミロオーディニウム病)
緊急性が最も高い病気です。「コショウ」や「小麦粉」のような細かい粉が特徴。エラに寄生するため、体表に出る前に呼吸困難で死んでしまうことも多いです。体表に粉が確認できた時点では、すでに末期症状に近いと覚悟してください。

🆘 今すぐ実践!病気の完全対処法(薬浴)
病気を特定したら、一刻も早く治療を開始します。治療の基本は「隔離水槽(トリートメントタンク)」での「薬浴」です。
ステップ1:隔離水槽(トリートメントタンク)の準備
病気の魚をすべて移動させるための水槽です。
- 水槽:小型水槽や大きめのプラケースでOK。
- 水:本水槽の飼育水(病原体はいますが、魚のストレス軽減のため)。
- 器具:ヒーター(本水槽と温度を合わせる)、エアレーション(必須)。
- 注意点:砂、ろ材、ライブロックは絶対に入れないでください。薬の成分を吸着してしまい、効果がなくなります。(=ベアタンク)
ステップ2:適切な魚病薬の選択と投入
病気によって使用する薬が異なります。
【白点病の場合】
以下のいずれかを使用します。
- 硫酸銅系:グリーンFゴールドリキッド、銅イオン(キュプラミン)など。最も効果が高いですが、魚への負担も大きいです。銅イオン濃度測定キットとの併用を強く推奨します。
- 色素系:メチレンブルー、グリーンF(顆粒)など。銅より効果はマイルドですが、魚への負担も少ないです。初期症状ならこちらでも対応可能です。
【ウーディニウム病の場合】
「硫酸銅系(銅イオン)」一択です。
メチレンブルーなどの色素系薬剤は、ウーディニウム病にはほとんど効果がありません。一刻も早く銅イオン治療を開始してください。
ステップ3:薬浴の管理と期間
- 病気の魚をすべて隔離水槽に移します。
- 魚病薬の規定量を正確に投入します。(体力のない魚がいる場合は、規定量の半分から始め、数時間かけて徐々に濃度を上げます)
- 薬浴期間は、最低でも5日~7日間続けます。
- 薬浴中は絶食、またはごく少量の餌にします(水質悪化を防ぐため)。
- 2~3日に1回、半分程度の水換えを行います。交換する新しい水にも、抜いた分の薬を必ず追加し、薬の濃度を維持します。
- 魚の体から白点が消えても、すぐに本水槽に戻してはいけません。(理由は次項)
🏠 本水槽はどうする?病原体の駆除(最重要)
魚を隔離しても、本水槽には大量の病原体(シストと呼ばれる卵の状態)が残っています。そのまま魚を戻せば100%再発します。
病原体(白点虫)のライフサイクル
①魚に寄生 → ②成長して魚から離れ、砂や岩に付着(シスト化) → ③シスト内で分裂・増殖 → ④シストが破れて幼生が水中を泳ぎ出し、再び魚に寄生
薬浴は①の寄生中と④の遊泳中にしか効きません。②と③のシスト状態には無効です。
本水槽の病原体を死滅させる最も確実な方法は、「魚がいない状態(空回し)」を一定期間続けることです。
- 病原体はシストから孵化しても、寄生する魚がいないと数日(48時間程度)で死滅します。
- ただし、シストが孵化するタイミングは水温によってバラバラです。
- 安全のため、白点病・ウーディニウム病ともに、最低4週間、可能なら6週間は本水槽から魚をゼロにしてください。
- ※エビや貝などの無脊椎動物は入れたままで問題ありません。
この「4~6週間の隔離薬浴+本水槽の空回し」が、再発を防ぐ唯一の確実な方法です。
🛡️ 最高の治療は「予防」!病気を持ち込まない方法
病気の治療は非常に大変です。最も重要なのは「病気にさせないこと」です。
- 水槽導入時のトリートメント(検疫)
病気の原因の9割は、新しく入れた魚が持ち込むものです。新しい魚は、すぐに本水槽に入れず、必ず別の「検疫水槽(トリートメントタンク)」で最低1~2週間は様子を見てください。ここで発症すれば、本水槽を守ることができます。 - UV殺菌灯(ステリライザー)の設置
水槽内を循環する水に紫外線を当て、水中を漂う病原体(幼生)を殺菌する装置です。予防器具として絶大な効果があります。完全に防げるわけではありませんが、発症率を劇的に下げることができます。 - 水温・水質の安定
水温の急変や水質悪化は、魚の免疫力を低下させ、病気を発症しやすくします。高性能なヒーターやクーラーを使い、定期的な水換えを怠らないでください。 - 栄養価の高い餌
ビタミンなどが添加された質の良い餌を与え、魚自身の免疫力を高めておくことも重要です。
まとめ:早期発見と隔離が鍵
海水魚の病気は、飼育者なら誰もが経験する可能性のあるトラブルです。しかし、慌てる必要はありません。
- 「白点病(塩)」と「ウーディニウム病(粉)」を正しく見分ける。
- 発症したら、すぐに魚を隔離し、適切な薬(特にウーディニウムには銅)で薬浴する。
- 本水槽は、魚がいない状態で最低4週間空回しして病原体をリセットする。
- 予防として「検疫」と「殺菌灯」を徹底する。
この手順を冷静に実行すれば、大切な魚を救える可能性は格段に上がります。諦めずに治療にあたってください。

