しかし、ここで一つ大きな壁があります。それは「生き物同士の相性」です。
「この魚とイモリは一緒に飼える?」「エビは食べられたりしない?」――。アクアテラリウムは水場と陸地が共存する特殊な環境だからこそ、生き物選びには注意が必要です。
この記事では、アクアテラリウムで飼育できる代表的な生き物を「水中編」「陸上・水陸両用編」に分けて紹介し、最も重要な「共存の可否(相性)」について、プロの目線で徹底的に解説します。

- アクアテラリウムで飼える生き物を選ぶ「3つの大原則」
- 水中におすすめの小型魚とエビ
- 陸上・水陸両用におすすめの両生類(イモリ・カエル)
- 【最重要】生き物同士の相性・混泳ガイド
- 生き物を迎える最適なタイミング
1. 生き物選びの「3つの大原則」
生き物を選ぶ前に、必ず確認すべき「3つの大原則」があります。これを守らないと、後で「こんなはずでは…」という悲劇が起こりかねません。
アクアテラリウム 生き物選びの鉄則
- 環境(温度・湿度)が合うか?
熱帯魚と日本のイモリでは、適した水温が異なります。アクアテラリウム全体の環境(加温するか、しないか)を決め、それに合う生き物で統一するのが基本です。 - 捕食関係にならないか?
「口に入る大きさのものは、基本的にエサと認識される」と考えましょう。小型魚と大型のイモリ、エビと魚など、捕食関係にならないか厳しくチェックします。 - 脱走対策は万全か?
特にイモリやカエルは「脱走の名人」です。わずかな隙間からでも逃げ出します。フタは必須であり、配線などの隙間もスポンジで埋める覚悟が必要です。
2. 【水中編】おすすめの生き物(小型魚・エビ)
まずは、水場を彩る定番の生き物を紹介します。丈夫で温和な種類が中心です。
(1) アカヒレ(コッピー)
飼いやすさ:★★★★★
「パイロットフィッシュ」とも呼ばれるほど丈夫で、低水温にも強い(ヒーター無しでも飼育可能)ため、初心者にも最適です。群れで泳ぐ姿は非常に美しいです。
- 注意点: 温和ですが、繁殖を狙う場合は、生まれた稚魚が他の魚に食べられないよう隔離が必要です。

(2) メダカ
飼いやすさ:★★★★★
日本の環境に慣れており、アカヒレ同様ヒーター無しでも飼育可能です。品種改良も盛んで、様々な色や形のメダカを選ぶ楽しみがあります。
- 注意点: 飛び跳ねることがあるため、水位を少し下げるか、フタをしっかりする必要があります。

(3) ミナミヌマエビ / ヤマトヌマエビ
飼いやすさ:★★★★☆
アクアテラリウムの「お掃除屋さん」として欠かせない存在です。水草や石に生えたコケを食べてくれるため、水景をきれいに保つのに役立ちます。
- ミナミヌマエビ: 小型で繁殖も楽しめる。
- ヤマトヌマエビ: 大型でコケ取り能力が高い。
- 注意点: 魚やイモリにとって「エサ」になりやすい存在です。混泳させる場合は隠れ家(水草の茂みなど)を多く作る必要があります。

3. 【陸上・水陸両用編】おすすめの生き物(両生類)
アクアテラリウムの主役とも言える、陸地を利用する生き物たちです。飼育には「フタ」が絶対に必要になります。
(1) アカハライモリ
飼いやすさ:★★★★☆
アクアテラリウムの定番中の定番。日本の固有種で丈夫、低水温にも強くヒーター無しで飼育できます。水中と陸地をマイペースに行き来する姿は非常に愛らしいです。
- 必要な環境: 水から上がって全身が乾かせる「完全な陸地」が必須です。
- 注意点: 「脱走の名人」です。1cmの隙間でも無理やり登って出ていきます。フタは必須、配管の隙間もスポンジで埋めるなど、厳重な対策が必要です。また、口に入るエビや小型魚は捕食します。

(2) 小型カエル(ヤドクガエル、マダラヤドクガエルなど)
飼いやすさ:★★☆☆☆(上級者向け)
鮮やかな体色が魅力的な小型のカエルたちです。陸地メインで活動し、水場は水浴びや産卵場所として利用します。ただし、これらは「ビバリウム」と呼ばれる、より陸地と湿度管理に特化した環境を好みます。
- 注意点: 初心者には推奨しません。彼らにとってアクアテラリウムの水場は深すぎることが多く、溺れる危険があります。また、温度・湿度管理がイモリや魚と異なる場合が多く、エサも生きたコオロギやショウジョウバエなどが必要になります。
もしカエルを飼いたい場合、アクアテラリウムではなく、カエル専用の「ビバリウム」や「パルダリウム」で飼育する方が安全です。「アマガエル」も同様に、アクアテラリウムでの長期飼育は難しい点(活動的で脱走しやすい、水場が深すぎる等)を理解しておきましょう。

4. 【最重要】生き物の相性・混泳ガイド
ここが一番知りたいポイントのはずです。「AとBは一緒に飼えるのか?」をケース別に解説します。
| 組み合わせ | 相性(評価) | 解説・注意点 |
|---|---|---|
| 小型魚(アカヒレ等) + エビ(ミナミ等) |
○ 良い | 定番の組み合わせ。ただし、エビの稚エビは魚に食べられるため、エビの繁殖を本気で狙うなら隠れ家(ウィローモスなど)が大量に必要です。 |
| 小型魚(アカヒレ等) + アカハライモリ |
△ 注意 | イモリが魚を捕食する可能性があります。特にイモリが空腹だったり、魚が弱っていたりすると危険です。混泳させる場合は、魚に素早い動きができる十分な遊泳スペースを確保し、イモリにしっかりエサを与えてください。自己責任の領域です。 |
| アカハライモリ + エビ(ミナミ等) |
× 不可 | ほぼ確実にエビはイモリのエサになります。イモリにとってエビはご馳走です。エビの命が惜しければ、絶対に共存させてはいけません。(エサとして導入するなら別ですが…) |
| イモリ + 小型カエル |
× 不可 | 推奨しません。カエルはイモリの皮膚の毒(フグと同じテトロドトキシン)に弱いです。また、イモリがカエルを攻撃したり、逆にカエルがイモリをエサと誤認する(サイズによる)可能性があり、ストレスも大きいため避けるべきです。 |
| 小型魚 同士 (アカヒレ+メダカ) |
○ 良い | どちらも温和で、ヒーター無しの環境を好むため、混泳に適しています。水場が賑やかになります。 |
【結論】初心者におすすめの安全な組み合わせ
パターンA:「小型魚(アカヒレ・メダカ)+ エビ」のみ
(※平和な水景を楽しみたい方向け)
パターンB:「アカハライモリ」のみ
(※両生類の飼育を楽しみたい方向け。エサとしてエビを入れるのはアリ)
まずはどちらかのパターンで始め、飼育に慣れてから「パターンAにイモリを追加してみる(魚が食べられるリスク承知で)」とステップアップするのが失敗しないコツです。
5. 生体を迎えるタイミングと注意点
レイアウトが完成しても、すぐに生き物を入れてはいけません。
- 水作りを待つ(必須): 水槽立ち上げ直後は、魚に有害な物質(アンモニアなど)が発生します。フィルターを稼働させたまま最低でも1〜2週間は待ち、水をろ過するバクテリアが育つのを待ってください。
- 「水合わせ」を丁寧に行う: 生き物を買ってきたら、いきなり水槽に放さず、水温や水質をゆっくり慣らす「水合わせ」という作業を必ず行ってください。
- 入れすぎない: 小さな水槽に生き物を詰め込みすぎると、水質悪化やストレスの原因になります。アクアテラリウムの水場は水量が少ないため、「少し寂しいかな?」くらいが適正です。
6. まとめ:相性を理解し、安全なアクアテラリウムを
アクアテラリウムで生き物を飼うことは、レイアウトの美しさ以上の「感動」を与えてくれます。
しかし、その感動は「生き物同士の相性」という土台の上に成り立っています。見た目の好みだけで選ばず、捕食関係や必要な環境をしっかりリサーチすることが、長く楽しむための最大の秘訣です。
まずは「アカヒレ+エビ」または「イモリ単体」といった安全な組み合わせからスタートし、あなたの水槽に命の輝きを加えてみてください。

